「思考力」とは何か? 〜近年のトレンドと学校別の思考力のパターン、伸ばし方について〜

この記事では、中学受験算数で大切になる「思考力」とは何か? 近年のトレンドと学校別の思考力のパターン、そしてその伸ばし方についてお話しいたします。

時に、思考力は「地頭」とほぼ同一のものとして語られます。

「思考力を伸ばす」と言ってもいったいそれはどのような能力で、どうやったら伸びるのか、漠然としかわからないという保護者様も多いのではないかと思います。

しかし、算数における思考力は適切な訓練と経験によって明確に伸ばすことができます。

また、それは算数以外の領域でも汎用性・展開性のある能力であり、だからこそ近年、全国の最難関・難関校の入試で重視されるようになっています。

このような「算数の思考力」について徹底的に分解して、わかりやすくお伝えできれば、と思います。

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2: 思考力が求められる学校と特色は?

サピックスオープンAタイプが技術系、サピックスオープンBタイプが思考力系と言われていますが、最難関を目指すのであれば、技術系と言われる学校であっても、思考力は求められています。

思考力がダントツに求められているのは栄光で、同様に語られることの多い麻布と比較すると、麻布は栄光に比べれば思考力系の問題は少ないと言えるでしょう。

※その栄光でも技術系の難問は出題されています。

開成は問題の傾向が年度ごとに揺れていますが、2020年の問題のように思考力が必要とされる問題が多く出る年もございますので、対策しておくことは必要です。

筑駒や女子学院は技術寄りではありますが、試して検証する思考力が必要とされています。

2010年代以降の最難関校では、最低でも大問1つは思考力系の問題を出題する学校が多くなっています。よって、最難関、難関を目指すのであれば、思考力を鍛えることは大切です。

関東以外の学校についても「5:思考力の種類と近年のトレンド」で詳しくどのような筋肉が求められているのかを記載いたします。

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3: 思考力が求められる塾・テストは?

思考力ばかりを鍛えさせている塾は少ないです。

その理由の1つは、思考力はすぐに発達する能力ではないことに対して、技術は適切に教えれば発達が早い事、

次に、思考力がなくても技術を固めてなんとか合格できる学校は多くあるものの、その逆、技術ではなく思考力単体で合格できる学校はほとんどないからです。

思考力を図る場合、サピックスオープンのBは思考力問題なので、思考力単体の力を測る上では最適なテストと言えます。(とはいえ、6年前期の志望校診断サピックスオープンを除き、ABがミックスされたテストが出題され、分析表にてABそれぞれの得点率がわかる形になるでしょう)

学校単位の問題だと思考力・技術力が必要とされる問題がミックスされているので思考力単体で力を測ることは難しくなっております。

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4: 思考力の伸ばし方は?

思考力問題の量をこなしていくのみです。算数のテキストは技術ベースで作成されており、そのような問題は数分でわからなければ解説を見て、技術を学ぶ、という解き方になります。

反面、思考力を鍛えるためには、技術習得モードから切り替えて、考える時間をきちんととって思考力問題を解く訓練が必要です。

自分で一定考えた後、綺麗な解法を真似て、思考力問題への取り組み方の「型」に慣れることによって初見問題(本番)でも使える力が育ってくるものです。

自己流の場合ですと、一定以上に思考力が伸びない傾向がございますので、型を真似て思考力を学ぶことが大事です。

型の4パターンについては次の項目でお話しいたします。

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5: 思考力の種類と近年のトレンド

問題ベースでは、

① 読解

② 整理

③ 試して検証(試行検証)

④ 誘導・解釈の4種類がございます。



それぞれ求められる学校は以下の通りです(もちろん、今後傾向が変化する可能性もあるので、狙いすぎた対策は危険です)

求められる思考力の種類:男子校

男子校①筑駒開成麻布聖光学院栄光
出来ると信じられるハート
読解力
整理能力
誘導に乗る、解釈する力
試行検証の力
男子校②武蔵駒東東海ラ・サール甲陽学院
出来ると信じられるハート
読解力
整理能力
誘導に乗る、解釈する力
試行検証の力

求められる思考力の種類:女子校/共学

女子校・共学①桜蔭渋幕渋渋早実女子学院豊島岡
出来ると信じられるハート
読解力
整理能力
誘導に乗る、解釈する力
試行検証の力
女子校・共学②フェリス慶応SFC筑波大附属久留米大附設南山女子
出来ると信じられるハート
読解力
整理能力
誘導に乗る、解釈する力
試行検証の力

それぞれの意味と難しさは以下の通りです。



A: 読解

非常に長い文章から状況やルール、言わんとしていることを読み取る力です。

文章が単に長いために、情報を抽出するのが大変と感じられ、問題に取り掛かる前にやる気を無くしてしまったりするお子様も多いです。(聖光学院、開成など)



B: 整理

与えられた情報を自分なりに、解に近づけるように整理する力です。算数の整理の方法の型を自分の中に入れていることが必要になります。

表などの情報整理パターンをストックしていることで問題が解きやすくなったり、整理だけで解けるようになったりします。(桜蔭など)



C: 試して検証

低学年から鍛えていることが多い思考力で、論理だけでは答えが決まらないので、実際に何パターンか試して、手を動かすことで答えを出す力です。場合の数、論理推理などで必要になることが多いです。(灘、開成、女子学院など)



D: 誘導に乗って解釈

例題や問題で与えられているものより深いものを解釈して、その上で問題を解く力です。(開成、灘、麻布など。近年のトレンド)



上記の4要素に加えて、思考力には土台となるマインドが必要です。

それは「解けるかもしれない!だから、立ち向かってみよう」と信じることができるハートやマインドです。

どのような問題にも言えることではありますが、特に思考力問題はその場で脳をフル回転して答えを見つける作業になるので、知っていることを当てはめる技術系と異なり、マインドに左右されやすいです。

このような精神力は過去の成功経験が元になりますので、本番で思考力を試される問題に怯まないよう、普段から鍛えて成功経験を積み重ねておくことが大切です。

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6: コベツバweb授業「思考力」のご紹介

2021年3月中旬から、「コベツバweb授業」内で「思考力」講座の配信が開始されます。

これまで「コベツバweb授業」では体系的に「技術」を身につけていただくことをコンセプトにオリジナルコンテンツを配信しておりましたが、「思考力」を身につけられる講座も配信して欲しいとのお声を受け、配信を決定いたしました。

技術を身につけていただくことが優先ですが、毎週2問ずつ(最長20分のテストと間違えた場合のやり直し最長20分程度)良質な思考問題に取り組まれることで難関入試に必要とされる思考力を鍛えていただくことができます。

お子様目線の、答えありきでない思考プロセスを動画で追えること、近年の入試トレンドを押さえていることが弊講座の特徴になります。

形式テスト形式(表彰動画つき)
頻度・量1週間に2問(初回)
一斉開催期間毎週 金曜日18時〜日曜日22時
テスト制限時間とやり直し時間合計20~40分

1問10分を目安に2問取り組まれた後、解説動画のご視聴、間違い直しに20分程度
難易度難関校・最難関校の過去問級
対象学年3~6年

比較的余裕のある早い学年から取り組まれると、思考力が着実に身に付くため、3年生以上が対象となっております。

(先取りをされていらっしゃる場合は、1,2年生のお子様も参加いていただけます。)
参加目安SAPIX算数偏差値55以上/四谷・日能研60以上

偏差値が上記の基準に達していない場合でも、取り組むことが出来る場合は、勿論参加していただいて構いません。

しかし、思考力だけで決着する学校は少なく、やはり前提として技術習得が重要になるため、技術習得に並行して取り組んでいただきたいと考えております。

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7: 質問コーナー

Q1: 思考力、技術のどちらが重要ですか?

どちらも最終的には備えていることが理想ですが、技術が武装されていれば合格できる学校はございます。一方、思考力だけで合格できる学校は少ないため、塾でも5~6年生にかけて技術を詰め込んでいるのが現状です。よって、技術の習得の方が優先ですが、最難関で必要とされる思考力を身につけるために、塾のカリキュラムで技術の習得に追われる前の3~4年生の段階から少しずつ思考力を鍛えておいて欲しいと思います。



Q2: 大学入試改革もあり、中学受験でも思考力が重視されるようになってきていますか?

思考力誘導タイプの問題が増えています。問題前半で与えられた規則に従って操作をして、後半でその規則を解釈して問題を解く問題が明確に増えてきています。

また、思考力単体の問題でないものの、技術を必要とする問題の中に、こういった規則の解釈など思考力も合わせて求められる問題が緩やかに増えています。



Q3:低学年から思考力問題に取り組む必要はありますか?

低学年から思考力問題に取り組まなくても、思考力の高いお子様もいらっしゃいますので、一概に必要、不要と申し上げることはできません。

しかし、5年、6年生前半では技術習得に追われてしまい、そのまま入試問題に取り組むカリキュラムが多いため、3、4年生の間に思考力を鍛えておくことは有用であるとコベツバでは考えています。



Q4:低学年向けの思考力教材(塾の補助教材等)との違いはなんですか?

低学年向けと入試直結の思考力系の教材の違いは明確にございます。

低学年向けの思考力問題では算数の基礎知識がなくても解ける問題が多いです。

一方、入試直結の思考力問題では、一定の算数の基礎知識・応用知識があった上での思考力をみる問題が多いです。コベツバweb授業の「思考力」講座でも技術を知っている前提での思考力問題が含まれておりますので、3、4年生が取り組まれた際に知らなかった技術が出てきた時には、その都度分野別教材で技術を学習していただけると幸いです。



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